
イングヴェイのメイン・パソコンは通称”Duck”(LaVie、PC-LM50H52DC)と呼ばれているノート型パソコンだ。 そしてOSは「ME」。フリーズしやすく扱いづらいはずの「ME」に、イングヴェイはことのほかこだわりを持っている。(”Duck”のみならず、自身が所有する163台のパソコンの内、実に162台のOSが「ME」!) なぜこれほどまでにMEにこだわるのかという点だが、これはキッズ時代に愛聴していた「オバQ」のギタリスト、ドロンパの影響が大きいようだ。
「オバQは大好きだった。9歳の誕生日に母親が単行本をプレゼントしてくれたんだ。本当にクレイジーになったよ。ドロンパのセリフは全てコピーした。一言残らず全てね。難しいことなんて何一つなかった。むしろ、すごく簡単だったよ(笑)。」
こういったところからも、イングヴェイの天才ぶりが伺える。
さて、この”Duck”だが、発売当時はそれなりの値段がしたらしい。しかし非常に古く、また、長年のステージで乱暴に扱われ大幅に傷や汚れがついているため、査定による買い取りの価格は全くのゼロ。今後も中古市場に出回る可能性は一切ないそうだ。そういった意味でも貴重なモデルといえる。
”Duck”はいくつかの点でイングヴェイならではのカスタマイズが施されている。
まずキーボードだが、イングヴェイ自身の手によって、全てのキーがスキャロップド加工されている。スキャロップド加工とは、一言で言ってしまえばキーに深くへこみを付けることで、これにより指がキーボードに馴染みやすくなったんじゃないかという錯覚を使用者に与える効果がある。イングヴェイ以外では、リッチー・ブラックモアも同様の加工をキーボードに施している。
(スキャロップドの加工方法等については、あとでもう少し詳しく述べる。)
イングヴェイはキーボードのコンディションにかなりの気を配っており、ライブ前やライブ中に手を洗うことはまずない。取材中や来客中であろうと、ポテトチップスを口に運びながら常にパソコンに向かっているイングヴェイだが、たまに手に付いたポテトチップスのカスを払ったりするだけで、全く躊躇することなくキーを入力していた。こうすることによって手の油がキーボード全体に染み渡り、すべりが良くなるというわけだ。イングヴェイはブラインド・タッチを使わず、また、数字はほぼ全てテンキーを使って入力するスタイルのため、この「すべりやすさ」が速くレスを打つための大きなポイントになるようだ。
次にCDドライブ。”Duck”はディスクドライブ類が内蔵されておらず、付属のドライブを外付けで使うシステムになっている。しかし、イングヴェイはこの付属のCDドライブを、ステージ上でのパフォーマンスで床に叩きつけて破壊!CDドライブがないと、かなり不便なはずなのだが、もともとDuckにはCDを再生したり焼くための十分な環境が整っていないということで、イングヴェイ自身はそれほど気にしていないようだ。しばらくしてからPLEXTOR製のCDドライブを池袋のビッグカメラで手に入れたそうだが、使うことはほとんどないそうだ。
カスタマイズというわけではないが、イングヴェイはDuckのスペックの悪さを補うため、「保存する無修正の動画は常に10個まで」と決めている。現在、ハイスペックなデスクトップ型パソコンを使うアーティストの多くは、オカズを集めることに夢中になるあまり大量の動画を保存しようとし、あげくの果てに外付けのハードディスクを購入までして、しかしながら保存はしたもののの、数が多すぎて結局すべての動画を使うことはないといった金と労力の無駄な消費に陥っているのであり、それと比較した場合、イングヴェイの質実剛健ともいえるシンプルなスタイルは、やはり洗練されているといえよう。
モデムは、「テプコ光」に加入した際に送られてきたものをそのまま利用している。ローディーが会社名を「テプコ光」「から「ドリームトレインインターネット」に変更したらしいが、イングヴェイによれば「パフォーマンスに大きな変化はない」とのこと。
そして、壁紙はもちろんフェラーリだ。

最後に、スキャロップド加工の方法について簡単に説明しておこう。まず、キーボードを分解し、全てのキーを取り外す。次に、キー表面の中心部が最も深くなるように考慮しながら外側に向かって念入りにヤスリがけをおこなう。そして最後に、もう一度キーボードを組み立てなおす。キーをヤスリで削った際に出た削りカスがキーボードに入ってしまうと動作不良を起こすので、キーボードを組み立てなおす前には、一つ一つのキーを念入りに洗う必要がある。キーを乾かすのは自然乾燥が基本。布やティッシュなどで拭いてしまうと、かえってホコリがついてしまうからだ。作業効率を上げるためにドライヤーなどを使う場合もあるが、温めすぎるとキーが熱で変形してしまう可能性があるため注意が必要だ。
このように、スキャロップド加工を行うためには熟練した加工技術と根気のいる作業が必要とされる。また、キーの表面を削ってしまうため、加工後は指板上の文字が一切確認できなくなってしまう。よほどの上級者でなければスキャロップドされたキーボードを扱うことは難しいので、初心者や中級者は手を出さないほうが無難だろう。
2005.11.23 ジャイアント(NAKED SENSATION)
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